■万里村れい
Best Album「My Story」
(FERD-7005)
1. Prelude for Tomorrow
2. 今日も夢みる
3. 夕陽が沈む
4. あなたに
5. HELLO, GOOD-BYE
6. 記念日の午後
7. このテーブルで
8. 風ぐるま
9. 夢みる人よ
10. 歌があるから
11. It’s Love
(2019年9月28日 リリース)
(CD Liner Notes)
1. Prelude for Tomorrow 〜明日をありがとう〜
’16年の3thシングルのリード・トラック。秀れた楽曲を提供してきたシンガー&コムポーザー奥野秀樹の作品で、ポジティブでヘルシーな万里村れいをアピールした力強い曲だ。
2. 今日も夢みる
ピーター・ポール&マリー(PPM)のカヴァー・グループとして慶應義塾大学のキャンパスで生まれたフォー・ダイムスで一躍注目された万里村が、その後結成したタイムセラーズで放った’68年の大ヒット曲。当時のラジオ番組から生まれたヒットで、番組のMC前田武彦と中村八大が補作している事も有名な、忘れ難き名曲である。
3. 夕陽が沈む
彼女のスタートとなったカレッジ・フォークの代表的グループ、タイムセラーズのオリジナルで、’66年の青春をこの曲で思い出すファンもいまだ多い。今回は、その新録音盤で、現在の万里村の姿と懐かしさをともに表現してくれる注目のヴァーションになっている。
4. あなたに
2017年発表の『歌があるから』に収録されていた田島庸助が作詞作曲した曲で、若き日の甘酸っぱく、どこか切ない思い出を綴る詞と、何よりもアルト音域を活かしたトーキング&シンギング・スタイルの万里村のヴォーカル・ワークが素晴らしい曲。ハーモニカの音とコーラスを使ったフォーク調のアレンジも注目点だが、ノスタルジックなゴスペルの味も加わり、ただの追憶曲にならないのは流石だ。
5. Hello,Good-bye
ビートルズに同名の曲があるが、これは「Prelude for Tomorrow 〜明日をありがとう〜」と同じく奥野秀樹の作品で、1960年代の感触を持つポップな
一篇.
6. 記念日の午後
『Prelude for Tomorrow 〜明日をありがとう〜』に収録。やはり奥野の作品。
かつて日比谷の映画館で観た映画、その映画を間違えて記憶している夫、その夫にそろそろ新しい眼鏡を、と気づかう妻の優しさと鋭さ・・・これだけ都会的でヴィジュアル的演出を成功させているものは、映画やドラマにはあっても、ポピュラー・ソングの域にはなかなか見当たらない。万里村に多くの楽曲を提供している奥野秀樹の作品の中でも出色の曲。
7. このテーブルで
’14年の「「Hello,Good-bye」と同じく奥野秀樹の書き下ろし曲で、発表時EPでは、リード・トラックになっていた美しいバラード。どこの家庭にもありそうな大きなテーブルを囲んでの家族の食事や5歳のやんちゃ盛りになった息子がつけた傷を見て、思い起こす夫婦の決して短くはない歩みを振り返りながら、歌詞にあるように、夫婦の歩みが第二章に踏み入った事を告げている。追憶のきっかけが、使い慣れた古いテーブルで、ストレートな私小説的楽曲なのに、洗練されたヨーロッパ調のトラディショナル・バラードに昇華するのは、やはり万里村の持ち味である。
8. 風ぐるま
’13年発表の「It’s Love」とのカップリング曲。作曲者は飯沼元浩で、作詞は飯沼と万里村自身によるもの。通り過ぎる時を風ぐるまに例えた詞も素晴らしいが、万里村の新しいスタートを伝える歌唱に惹かれた思い出が蘇ってくるナンバーだ。
9. 夢みる人よ
激しい曲調ではないのに、なんと凄い曲が生まれたものだ、と’17年にショックを受けた力作。老いた母を見守る気持ちを、むしろクールに描き歌えるのは万里村ならではのヴォーカルの力だろう。次曲「歌があるから」とともに、彼女のスピリチュアルな表現力が改めて届く思いだ。池田浩充(作曲)と石黒直子(作詞)による作品。
10. 歌があるから
’17年発表のスピリチュアル・ソング。万里村自身の詞が、歌への新たな決意を表しているのは言うまでもないが、そのストレートな情感を、ハワイ在住のコムポーザー荒木健太がパワフルな作曲力で築き上げた。新鮮なコンビネーションである。
11. It’s Love
’13年発表のE Pのリード・トラックで「風ぐるま」とともに、万里村の新しい世界を伝えてくれたインパクト十分の曲がフィナーレを飾る。作詞作曲ともに万里村れいで、現在の彼女を見せる代表曲中の代表曲だろう。
楽曲解説:音楽評論家/大伴 良則 (Y.OTOMO)